日本、カナダ問わず世界中で医療現場の人手不足が深刻化しています。また、日本に訪れる外国人の増加に伴い、医療現場でも英語力のある人材が求められています。
「助けたいけれど、英語でなんて言えばいいのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。カナダのヘルスケア留学では、そんな今求められる医療英語を習得することができます。
今回は、カナダのヘルスケア・医療英語留学の特徴やメリットなどについて紹介していきます。
カナダのヘルスケアとは?
①ヘルスケアって何?
ヘルスケア(Health Care)の認識は日本と海外で少し異なります。日本でよく言われるヘルスケアは健康的な食生活をしたり、体調管理を心掛けたりといった“自分が健康のために行うもの”という意味合いが強いですよね。
一方でカナダや欧米などで使われるヘルスケアは、健康管理という意味も含みますが、医療や看護、介護といった健康を保つためのケアや治療といった“医療や医療制度そのもの”をいう場合が多いです。
例えばカナダの医療制度はヘルスケアシステム(Health Care System)といい、日本の厚生労働省のように、国民健康保険の整備や感染症対策といったことを行います。
②カナダのヘルスケアについて
日本でも医療や介護の現場における人手不足が大きな社会問題になっていますが、カナダも日本と同じ問題を抱えています。そこでカナダはその人手不足を解消するために、医療の経験のある海外の看護師や介護士の受け入れに力を入れています。
看護師や介護士を養成する専門学校やカレッジを整備し、移住を目指す外国人がカナダの医療体制や英語での医療サービスの提供ができるようにしています。
そのため、カナダにはヘルスケアに関する資格を取得できる教育機関が多くあります。学校によっては、インターンシップやボランティア活動を取り入れ、現地での就職を目指す後押しをするプログラムも行っています。
③ヘルスケアに関わる仕事
レジスターナース(Registered Nurse):正看護師
日本で看護師の経歴のある人は、カナダでも正看護師を目指すことができます。ただし、カナダで正看護師になるためには高い英語力が求められる上に、カナダの医療や看護を学ぶための専門教育を受ける必要があります。
それぞれの州ごとに決められた手続きを行い、試験に合格する必要があり、カナダで正看護師として働けるようになるまでには、長い時間と高額な費用がかかります。
そういったハードルを乗り越えていくためには「カナダで看護師として働きたい」という意思の強さや覚悟が必要です。
ライセンスプラクティカルナース(Licensed Practical Nurse):准看護師
レジスターナース(正看護師)とライセンスプラクティカルナース(准看護師)の違いは州によって定義が異なります。どちらの看護師も医療現場では仕事内容に若干の差はあっても、同じようなポジションを担うことになります。
違いは四年制の大学を卒業し学位を取得しているかどうかということです。RN(正看護師)を目指すために、まずLPN(准看護師)の試験に合格し、カナダでの就労体験を積み重ねる人もいます。
ヘルスケアアシスタント(Health Care Assistant)
ヘルスケアアシスタント(Health Care Assistant)は医療現場で医療行為以外のサポートを行う人のことをいい、HCAと略す場合もあります。日本で医療現場の経験のない人でも、必要なコースを修了すれば、1年以内に取得することが可能です。
ケアエイド(Care Aide)
ケアエイド(Care Aide)は日本の介護福祉士のような職業です。RN(正看護師)を目指す人が、取得までの経験を積むためにケアエイドとして働くケースも多いです。
ケアギバー(Care Giver)
ケアギバー(Care Giver)は子どもや高齢者などのケアをする仕事の総称です。子どもの場合はベビーシッターやナニーとして、保育の必要な個人の家庭で子どものケアをします。高齢者の場合ケアエイドとして、個人宅や高齢者施設などで高齢者の介護にあたります。
ファーマシーアシスタント(薬剤師アシスタント)
カナダでは、多くのドラッグストア内に薬剤師が常駐するファーマシー(薬局)があります。薬剤師はドラッグストアに市販薬を買いに来るお客さんの対応や、病院から出た処方箋に基づき、患者に薬を処方し、正しい服用方法の説明などを行います。
ファーマシーアシスタントの場合は、直接的な処方箋の受け取りや処方などは行えないため、薬剤師のもとでサポート業務を行います。
医療通訳
日本人の患者とカナダ人の医師の通訳として介入し、コミュニケーションがスムーズかつ、お互いに正しく理解し合えるように援助します。現地に在住する日本人や、観光や留学などで一時的に滞在している日本人が医療を受ける際の不安を軽減するために必要とされています。
カナダでのヘルスケアワーカーや医療英語の需要の高まり
医療現場で英語の必要性を感じる人が増えている
最近では、海外からの観光客や日本に働きに来ている外国人の数が増えてきましたよね。それに伴い、医療サービスを利用する海外の人も多くなり、医療現場で英語力の必要性を感じる人が増えてきています。
患者である外国人の訴えている症状を正確に把握し、医師や薬剤師などの説明を患者が正しく理解できるように伝えられる英語力が必要です。日常会話レベルの英語力ではなく、医療英語に精通している必要があります。
慢性的なヘルスケアワーカー不足
日本に限らずカナダも医療や介護の現場では人手不足が慢性化しています。そのため、日本での介護や看護の経歴を持つ人は、カナダへの移住への可能性も通常の場合より高まります。
高い英語力や専門学校やカレッジなどに通ってカナダの資格を取得する必要はありますが、資格があれば活躍できるフィールドが日本からカナダまで一気に広がります。
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ヘルスケアを学ぶのにおすすめの専門学校2選
ILAC International College トロント校
ILACのHealth Care Administration Program(ヘルスケアアドミニストレーションプログラム)では、医療現場でのオフィス業務、つまり医療事務を学び、ディプロマが取得できるプログラムです。
医療英語のスキルを高めたり、医療情報を管理するやり方を学んだりしながらカナダの医療事務に関する知識と理解を深めます。
医療系のプログラムにしては珍しい40週間のCo-op付きのコースがあり、しっかりと授業で学んだスキルを現場で実践することができます。英語での医療サービスに携わる貴重な経験をすることが可能です。
ILACインターナショナル・カレッジ(トロント)
Gateway College(ゲートウェイカレッジ)
Gateway College(ゲートウェイカレッジ)は医療や介護に特化した専門学校です。看護師資格を持つ経験豊富な現役看護師から、実践的な授業を受けることができます。この学校では、基礎知識を固めてそれを実習で実践するという充実したカリキュラムを提供しています。
そのため、日本で医療や介護が未経験の人でもヘルスケアのプロフェッショナルを目指すことが可能です。また、ヘルスケアに関連するさまざまなコースがあり、ヘルスケアアシスタントコースや医療英コース、認知症介助コースなど目的に合わせて選択することができます。
Gateway College(ゲートウェイカレッジ)
ヘルスケアプログラムの内容
授業内容
今回は数あるヘルスケアのコースの中でも1年未満で修了できる“ヘルスケアアシスタントコース”の内容を紹介します。ヘルスケアアシスタントの資格は医療現場での経験がない人でも取得を目指せて、カナダで需要の高い職種なので安定して仕事を得られるというメリットもあります。
ヘルスケアアシスタントのカリキュラムは3つの分野で構成されており、授業と実習を行いながらカナダの医療制度や介助の仕方などを学びます。
- Health…健康維持のために必要な人間関係や生活の選択
- Healing…ケアや介助、回復の段階におけるケア課程
- Practice…状況に応じたケアの実習課程
必要な英語力
ヘルスケアアシスタントコース受講に必要な英語力はTOEFL iBT76、IELTS6.0以上(オーバーオール5.5以上、スピーキングとリスニングは6.0以上)程度です。そのため、留学前にしっかりとプランを練り、英語力をきちんと高めてからコースを受講することをおすすめします。
費用
今回はILAC international CollegeのHealth Care Administration Program(ヘルスケアアドミニストレーションプログラム)の費用を例に見ていきます。
項目 | 費用 |
---|
授業料(52週) | 17,000カナダドル |
教材費 | 1,000カナダドル |
入学金 | 200カナダドル |
ヘルスケアアシスタントコースの場合は、学校やコースの期間によって費用には差がありますが、1年のコースで大体4,000~9,500カナダドル(約30~75万円)前後のところが多いです。
医療英語留学の特徴やメリット
医療英語とは?
医療英語とは、文字通り医療現場で必要な英語のことです。日常会話やビジネス英語とも異なる、医療業界に特化した医学用語や薬の名前などを学びます。
また、そういった英単語を覚えるだけではなく、患者さんや医師、その他の医療従事者とのコミュニケーションを正確かつスムーズに行えるようなコミュニケーションの方法などを学ぶのも医療英語の大切な目的です。
医療英語コースの特徴
ヘルスケアに関連して医療英語コースも注目されています。医療英語を学ぶことで、日本で英語での医療サービスを必要とする人に的確な通訳やサポートをすることができます。
医療英語コースはヘルスケアコースと比較すると短期間でサティフィケートを取得することができるので、学生から社会人まで気軽にチャレンジすることが可能です。
医療英語を学ぶメリット
医療英語留学は日本でのキャリアアップを目指す人に大きなメリットがあります。現在医療現場で看護師や介護士といった資格のある人にとっては、グローバル人材として幅広く活躍できるチャンスになります。
また、これから医療に携わろうとしている学生やキャリアチェンジを考えている社会人にとっても、短期間で集中して学べる医療英語留学は新しいスキルを手にできる可能性を広げます。
医療英語コースでおすすめの語学・専門学校3選
ILSC バンクーバー校
ILSCの医療英語コースでは、すでに看護師や介護士など医療や福祉の現場での経験がある人にとってためになる医療英語を学べます。ただ医療現場で使う単語を覚えるだけではなく、ロールプレイングやプレゼンテーションなどを活発に行うことで、効率的に現場で使える医療英語を学びます。
また、医療通訳士を目指す人に向けた医療通訳プログラムも提供されています。通訳時に必要となる生体構造に関する英語を学び、リスニング力とスピーキング力を養います。希望者はクリニックや薬局などでインターンシップを行うことも可能です。
ILSC バンクーバー校
ESC(English School of Canada)
ESC(English School of Canada)はトロントで唯一医療英語プログラムが学べる専門学校として人気です。すでに看護師や介護士など医療従事者として働いている人におすすめのカリキュラム構成となっています。
授業スタイルは医療現場をイメージしたロールプレイングやプレゼンテーションといった実践形式を多く取り入れています。またESCのESL(語学学校)のレベル7以上でこのコースの受講が可能という条件もあるので、英語力が不安な人はESLでしっかりと英語力を培うこともできます。
ESCトロント(イングリッシュスクール・オブ・カナダ)
VIC
VICの医療英語コースは、すでに医療経験を持った人向けの医療現場で使える英語を学べるコースです。このコースはVICのESL(語学学校)の選択コースのひとつで、午後の1コマを使って行われています。
そのため「英語を学ぶだけではなく、専門性の高い医療英語も学びたい」と考えている医療関係者に適しています。事故や応急処置時の英語でのコミュニケーション方法や、医学的な専門用語などを学ぶことができます。
VIC(バンクーバー インターナショナル カレッジ)
医療英語コースの内容
医療英語コースは手軽に受講できる短期コースから、現地で働くことを視野に入れてインターンシップができる長期コースまで、幅広いコースが提供されています。
主な授業内容
- 医療専門用語
- 医療ケーススタディーの研究
- 医療現場でのコミュニケーション方法
- 事故/応急処置時の医療英語
- メンタルケアについて
- 患者のモニタリングの仕方など
コース費用
医療英語コースの中には1週間で大体400カナダドル(約3万円前後)から受講できるものから、16週間コースで約5,000~6,000カナダドル(約40~47万円)というものまでさまざまあります。
一般的に医療英語コースはヘルスケアアシスタントコースに比べると授業料は安いです。
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よくある質問
カナダの医療従事者の年収はいくらぐらい?
年収は誰もが気になる部分ですよね。金額は働く環境や州によって金額は異なるので、今回紹介する金額はあくまでも目安と考えてください。
資格 | 年収目安 |
---|
正看護師 | 80,000カナダドル |
准看護師 | 55,000カナダドル |
介護士 | 43,000カナダドル |
ヘルスケアアシスタント | 37,000カナダドル |
必要なビザは?
ヘルスケアコースも医療英語コースもどちらも6か月以上受講する場合は、学生ビザの取得が必要です。一方で6か月以内の滞在の場合、カナダはビザの取得が免除されているので、特にビザ申請の必要はありません。
ただし、eTA(Electronic Travel Authorizations)の取得が必要な場合があります。また、ワーキングホリデービザでも6か月以内の就学が認められているので、短期間のコースであれば受講可能です。
カナダ留学にはどのビザが最適?ビザの違いと取得方法【比較表付】
まとめ
医療現場で働く人にとって、患者さんとのコミュニケーションは治療やケアをするにあたって最も基本的な部分です。そして、これから医療サービスを受けに来る外国人はますます増えていくでしょう。
そんな時に、英語でしっかりと外国人の患者さんとコミュニケーションが取れる人がいれば、それだけで患者さんは安心できますよね。カナダで海外と日本の医療の違いを学んだり、医療現場で必要となる英語表現や言い回しなどを知ったりすることで新たに見えてくるものがあります。
スキルアップやカナダへの移住など、さまざまな目的に対応できるヘルスケア・医療英語留学。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
医療英語・ヘルスケアが学べる語学学校・専門学校一覧
Yuri Kondo
幼いころから英語に触れることが好きで、高校生の時にアメリカへ、高校卒業後はカナダへ行きました。休日はネットフリックスで海外の映画やドラマなどを見るのが趣味です。お気に入りは、ストレンジャーシングスというドラマです。両親がカナダへ住んでいたことから、留学先をカナダに決めました。秋の紅葉がとてもきれいで、毎朝30分ほどウォーキングをしていたことが思い出に残っています。
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